このブログでは、管理者の北河内学が「相続・事業承継アドバイザーFP」として、相続・事業承継について考える方の役に立つ考察内容を公開しています。
こんにちは。私はアラフィフ銀行員の『北河内学』(ペンネーム)です。
前回は、厚生労働省発表の「人口動態統計」を使って、
相続の年間発生件数は年間134万件に達し、30年前の約2倍にまで増加している
事を見てきました。
→前回記事はこちら
さて、次に気になるのは、相続のもめ事(=争族)は、どのくらい発生しているのか?
という疑問です。
もう少し具体的には、
①多いのか少ないのか?
②増えているのか減っているのか?
③中身はどうなのか?
というところが気になります。
注目されている相続(争族)ですが、先の疑問などを解消し、実際のところ、「自分に関係あるのか」が知りたいところだと思います。
今回は、前記①②について、データを使用して見ていきたいと思います。
「争族」の定義は不明確ですが、幅広く「遺産分割にあたり相続人間で不調和がある」というレベルまで捉えると数値の把握が困難です。
そこで、今回「争族」を「遺産分割調停」申立にまで至った、つまり、相続人間の協議で分割ができずに家庭裁判所に分割の申立があった件数として捉えます。
なお、同じく、家庭裁判所に「遺産分割の審判」の件数データがありますが、これは実務上は、まず調停からスタートし不調の場合に審判に移行するそうなので、審判の数値は除外しています。
次のグラフは、裁判所が公開している司法統計から、「遺産分割調停」の新規申立件数を抽出したものです。
直近データの平成29年の全国の家庭裁判所に申立があった「遺産分割調停」の新規受付件数は約1万4千件でした。
増減で見ると、
約10年前の平成20年対比では、プラス3千件、30%増に
32年前の昭和63年対比では、プラス8千9百件、3倍近い増加に
なっており、増加基調にあります。
この絶対数、年間争族1万4千件をどうとらえるかですが、ここでもう一度相続発生件数を振り返ります。
前回確認した年間相続発生件数134万件(H29)対比では、1.0%にとどまり、少ないようにも考えられます。
しかし、増減率を計算しても、相続増減率<争族増減率、となっており、争族件数は増えていると言えそうです。
また、そもそもではありますが、やはり「遺産分割」は、遺言による「指定分割」、相続人協議による「協議分割」で分割される事をスタンダードとしている訳であり、
「調停・審判分割」に至るのは、やむをえない場合の対応という事を考えると、たとえ1%でも多いと言えると思います。
絶対数として年間1万4千件の「遺産分割調停」申立・・・
毎年これだけの被相続人の親族が争族となって揉めている・・・
元々、仲が悪い、疎遠であった親族が多いのかもしれませんが・・・
仲が良かった親族が遺産分割による争族を契機に断絶するケースもあるでしょう。
想定できるのは、この1万4千件の争族関係者の大半は、親族関係が悪化し、修復も難しいだろうということ・・・。
こんな事はできれば回避したいものです。このあたりの事については、今後また検討していきたいと思います。
さて、そうは言っても、
「1%だし自分には関係ないのでは?」
「相続財産が多い人の問題でしょ?」
「だから面倒くさい事は考えたくない」
と思うのも人情です。
確かに本当に争族に関係なければ、小難しい事について考える必要はないと思います。
しかし、先にも触れましたが、「争族」の定義は不明確です。
今回データで見た「遺産分割調停」は「争族」の中でも最悪の事態でしょう。
そして、実際の「争族」は、その前段階の「遺産分割協議」で紛糾して解決したが、実際のところ、親族間のわだかまりや疑心暗鬼が残っているケースまで考えると更に大きい数値となるはずです。
更に先に見た「遺産分割調停」データの中身を見ると驚愕の事実がわかります。
これについては、次回考察したいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
北河内 学
<資格学習ブログ(抜粋)>
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