このブログでは、管理者の北河内学が「相続・事業承継アドバイザーFP」として、相続・事業承継について考える方の役に立つ考察内容を公開しています。


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こんにちは。私はアラフィフ銀行員の『北河内学』(ペンネーム)です。

これまで、注目される「相続」について、

「ほんとのところ何をどこまで考えていく必要があるのか?」を考えるために関係データを考察してきました。


初回は、厚生労働省発表の「人口動態統計」を使って、

相続の年間発生件数は年間134万件に達し、30年前の約2倍にまで増加している

事を見てきました。

→前々回記事はこちら


出生数と死亡数の推移






そして、2回目は、裁判所の「司法統計」を使って、

相続のもめ事(="争族")のうち、「遺産分割調停」に至るケースは、年間1万4千件に達し、増加基調である。

事を見てきました。

→前回記事はこちら

遺産分割推移





そして3回目は、これも裁判所の司法統計を使って

〇"争族"の金額的内訳は、大半(=75%)が相続財産5000万円以下でもめている。争族問題は、資産家世帯だけの問題ではない。

〇そして、"争族"事件になれば、ほぼ"弁護士関与"が必要になり、報酬等の費用も発生。

〇争う期間も長期化の懸念がある。心情まで含めた解決は望み難い。


という事を見てきました。

遺産分割内訳①



遺産分割内訳②



遺産分割内訳③






そして、今回は、「遺言書」のデータを見ていきます。

"争族"回避策として「遺言書」が有効である事は一般的に認められていると思います。

本来は、この有効性をしっかり論証したうえで先に進むべきかと思いますが、これについては、他のサイト等でたくさん掲載されていることもあり、今回はデータ確認を優先して進めたいと思います。

ただ前提としてどうしても記載しなければならない点について、先に簡単に記載します。

民法で定める「遺言書」には、「普通方式」と「特別方式」があり、このうち「普通方式」には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

一般的には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が主に利用されています。

「自筆証書遺言」は全文、日付、氏名を自書(改正法H31.1.13施行により財産目録部分は自書でなくともよくなった)し、押印のうえ、作成、保管しておくものです。

「公正証書遺言」は、公証人法に基づく「公正証書」を利用して「遺言書」を作成するもので、遺言者が証人2名立ち合いの下、公証人に対し、口授で伝えた内容(実際は書面で事前に打ち合わせ)を、公証人が「遺言公正証書」として作成し、遺言者、公証人、証人2名が署名押印して作成するものです。

双方にはメリット、デメリットがあり、専門家の方は一般的に「公正証書遺言」が推奨されますが、私は「自筆証書遺言」を推奨します。これについては、色々理由があるのですが、また別の投稿でお話したいと思います。




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それでは、まず「自筆証書遺言」のデータです。

次のグラフは、裁判所の司法統計から、遺言書の検認件数をグラフにしたものです。(採用年は抜粋して表示しています)

遺言書検認件数



「自筆証書遺言」は、相続発生後、そのままでは相続手続きに使用できず、必ず、家庭裁判所の「検認」の手続きを経なければいけません。

これが大変に手間暇がかかるため、「自筆証書遺言」のデメリットと言われるのですが、データ確認の面では役に立ちます。

本件データは検認件数なので、ほとんどが被相続人一人一通作成と仮定すれば、タイムラグはあるにせよ、ほぼ同時期の年間の相続発生数と対比可能です。

数値は、直近で年間1万7千件程度と、相続発生数の1%強と少な目です。

増減は、徐々に増加していますが、相続発生数も増加しているため、利用率は伸びていないと言えるでしょう。

更なる利用率向上が望まれます。これについては、今般の民法(相続法)改正と同時に成立した「法務局における遺言書の保管等に関する法律」がこれから整備され、2020年7月10日に施行され、普及が期待されます。これについても、また別投稿で記載したいと思います。




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次は「公正証書遺言」のデータです。

遺言公正証書作成件数


公証人連合会が公表しているデータから抜粋しています。このデータは遺言書に関するデータ分析としてよく利用されています。

こちらは、直近で年間11万件と先ほどの「自筆証書遺言」とはケタが違う大きさです。

ただ、このデータは「年間で遺言公正証書が作成された数」を示しているため、相続発生数と対比ができないのが残念なところです。

また、この「公正証書遺言」は、データはないのですが、私が思うに、リピーターの数も相当数あるのではないか、という点で総数だけの判断が難しいと思うのです。

つまり、一人の人が何回も「公正証書遺言」を作り直している可能性を否定できないので、その割合をつかまないとデータ分析が困難な面があると思うのです。

数値を示しておいてなんですが、このデータについては、「作成数であるため相続発生数とリンクしていない」、また「リピーターの割合を考慮する必要がある」点を認識しておく必要があると思います。



なんだかとりとめのないものになってしまい申し訳ありません。

世間一般では、"遺言は増えている"と言われているのかもしれませんが、今回の考察での私の実感としては、数は増えているかもしれませんが、割合としては、増えているとは思えない、というところです。


相続ビジネスが時流になり、多くの専門家やマスコミまでが特に公正証書遺言作成を推奨している割には普及が進んでいない・・・・

でも"争族"問題は増加傾向にあり、最も有効と考えられる対策が「遺言書」であることに変わりはない・・・

だから、このたびの民法改正に併せて、先程も記載した「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が今回整備されたのだと考えられます。

このあたりの市民目線での考察をまた改めて行いたいと思います。




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最後までお読み頂きありがとうございました。

北河内 学


<資格学習ブログ(抜粋)>