このブログでは、管理者の北河内学が「相続・事業承継アドバイザーFP」として、相続・事業承継についての本音の意見を投稿しています。
改正民法(相続法)とともに成立した、『法務局における遺言書の保管等に関する法律』(2020年7月10日施行)について、シリーズで掲載しています。
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目次
1 なぜ『遺言書保管法』の条文を検証するのか?(再)
2 第四条(遺言書の保管の申請)条文
3 「法務省令で定める様式・無封」とは?
4 「申請できる遺言書の保管所(法務局)」
5 「法務省令で定める申請書」
6 「自ら出頭」
1 なぜ『遺言書保管法』の条文を検証するのか?(再)
先般2018年7月の民法改正(主として2019.7.1施行)とともに成立した『法務局における遺言書の保管等に関する法律』(以下、『遺言書保管法』)は、「自筆証書遺言ながら家庭裁判所の検認不要」など、これまでの「自筆証書遺言」のウィークポイントを補うものとして話題性が高まっています。ただ、実際の実務内容は今後策定される「法務省令」に委ねられており、まだ詳しい実務運用はよくわからない部分があります。
しかし、だからといって、条文の理解を後回しにする必要はありません。実際、条文を読むと、例えば「検認不要とは言っても、公正証書遺言の検認不要とは実務的な手間が大きく違いそう・・・」といった事が見えてきます。
幸い、『遺言書保管法』の条文は全18条と少ないため、法律家ではない私でもある程度読み解けると考え、実行する事にしました。
2 第四条(遺言書の保管の申請)条文
第四条の条文は次の通りです。
1 遺言者は、遺言書保管官に対し、遺言書の申請をすることができる。
2 前項の遺言書は、法務省令で定める様式に従って作成した無封のものでなければならない。
3 第一項の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合にあっては、当該他の遺言書が保管されている遺言書保管所)の遺言書保管官に対してしなければならない。
4 第一項の申請をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、遺言書に添えて、次に掲げる事項を記載した申請書を遺言書保管官に提出しなければならない。
一 遺言書に記載されている作成の年月日
二 遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
三 遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
イ 受遺者
ロ 民法第千六条第一項の規定により指定された遺言執行者
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
5 前項の申請書には、同項第二号に掲げる事項を証明する書類その他法務省令で定める書類を添付しなければならない。
6 遺言者が第一項の申請をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。
3 「法務省令で定める様式・無封」とは?
まずは、申請時の遺言書の様式です。自筆証書遺言は民法968条で定める方式(自筆で全文、日付、氏名を記入し押印、財産目録のみ自筆でなくても可) を満たしてばどのような様式でも問題ありません。しかし、全国の遺言書保管所で保管する遺言書は、遺言書保管法では「法務省令で定める様式・無封」という条件が定められています。
これは、①民法968条適合の外形的確認、②本人記入確認、③画像情報取得、等の理由から条件を定めるものと思われます。
自宅で何度も書き直し便箋に書いた遺言書を持参しても保管してもらえないので注意しなければなりません。
具体的な様式はどのようなものになるのか気になるところです。個人的には「付言事項」の記入が認められるのか気になります。
法務省令の様式が決定されれば、インターネットでダウンロード可能になると思われ、これを使用して作成し遺言書保管所に持参する事になるでしょう。
4 「申請できる遺言書の保管所(法務局)」
次は申請可能な遺言書保管所(法務局)です。遺言書保管法では、次の条件を付しています。①遺言者の住所地
②遺言者の本籍地
③遺言者が所有する不動産の所在地
これら①~③のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)という事になります。
なお、すでに遺言書が保管されている場合は、当該遺言書保管所のみに保管申請可能という事になります。
ここでひとつ疑問がでてくるのですが、複数の遺言書保管を認めるのかという事ですが、この条文からは認められる事になりそうです。
私見としては保管できる遺言書は1通のみとして、内容変更時は洗い替えとする方が良いと思われますが・・・。
5 「法務省令で定める申請書」
遺言書保管法では、遺言書保管所に保管申請する遺言書には、「法務省令で定める申請書」を添付しなければなりません。当該申請書の記載内容は次の通りです。
①遺言書記載の作成年月日
②遺言者の氏名、生年月日、住所、本籍地
③受遺者の氏名・住所(遺言書に記載がある場合)
④遺言執行者の氏名・住所(遺言書に記載がある場合)
⑤その他法務省令で定める事項
ここでいう②の「受遺者」には相続人を含んでいると考えられます。
当然ではありますが、申請書には①~⑤の事実を証明する書類(戸籍謄本等)を添付しなければなりません。
6 「自ら出頭」
条文では、遺言書の保管申請は、本人自ら遺言書保管所に出頭して行わなければならない事とされています。従って、代理人等による申請は認められない事となります。
ここで気になるのは、出頭が困難な人、自筆困難者等への対応(いずれも公正証書遺言では対応可能)はなされないのか?という点が気にかかるところです。
以上です。
最後までお読み頂きありがとうございました。
北河内 学
<資格学習ブログ(抜粋)>
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