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今回は、2018年民法(相続法)改正と同時に公布された「遺言書保管法」(2020年7月10日施行予定)の条文を確認するシリーズの続きです。


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自筆証書遺言の普及を目的に制定された「遺言書保管法」ですが、いったい条文にはどのような事が定められているのでしょうか。


第10条 遺言書保管事実証明書の交付

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今回は第10条(遺言書保管事実証明書の交付)です。早速条文を確認します。



遺言書保管事実証明書の交付)

第十条 

何人も、遺言書保管官に対し、

遺言書保管所における関係遺言書の保管の有無

並びに当該関係遺言書が保管されている場合には

遺言書保管ファイルに記録されている第七条第二項第二号(第四条第四項第一号に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる事項を証明した書面(第十二条第一項第三号において「遺言書保管事実証明書」という。)

の交付を請求することができる。



2 前条第二項及び第四項の規定は、前項の請求について準用する。





前記が条文内容です。

今回の第10条は「遺言書保管事実証明書」の発行について定めています。


「遺言書保管事実証明書」は簡単に言うと"当該被相続人に関して自身が「関係相続人」(受遺者、遺言執行者等)であるかを確認するための書面"です。

遺言書を保管している遺言書保管所(法務局)の他、全国の法務局で請求できます。

添付書類は「遺言書情報証明書」よりも大幅に簡素になると推定されます。

この手続きによる遺言書保管官から相続人への通知義務はありません。


もう少し詳しく見ていきます。

「遺言書保管事実証明書」はなんのためにあるのか?


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第10条の「遺言書保管事実証明書」とは、そもそもなんのためにあるのでしょうか?

記載内容の詳細は今後明らかになりますが、「請求者自身が当該被相続人の関係相続人である遺言書が保管されているかを確認するために発行される書面」という事になります。

しかし、前回の第9条で見た通り、保管遺言書自体は「遺言書情報証明書」を請求し相続手続きを行なえば良いのに、なぜこの「言書保管事実証明書」という別の証明書があるのでしょうか?


それは、「遺言書情報証明書」の請求には、家庭裁判所への検認申請手続きとほぼ同様の添付書類が必要となる見込みであり、保管遺言書があるかどうか不明の中で請求手続きを行うには煩雑すぎるからと考えられます。


従って添付書類が少なくて請求手続きが可能と想定される「遺言書保管事実証明書」を定める事で、関係手続きをスムーズに進める事が狙いと見られます。

関係相続人等は、①まず必要最小限の添付書類でこの「遺言書保管事実証明書」を請求し、②保管が判明した場合は、添付書類を更に整え、「遺言書情報証明書」を請求のうえ相続手続きを進めるという事になります。




「遺言書保管事実証明書」→ 保管遺言書があるか確認する手続き

「遺言書情報証明書」→ あると判明した保管遺言書の証明を請求する手続き

と言えます。



「遺言書保管事実証明書」の交付は、誰が、いつ、どこで請求できるのか?

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さて、次はこの「遺言書保管事実証明書」は、①誰が、②いつ、③どこで請求できるのか?です。

①誰でも

②相続発生後に

③全国の遺言書保管所(全国約300の法務局)で



という事になっています。



①誰でも については、条文上"何人も"と記載されている通りです。

基本的にある人が亡くなって、自分が関係相続人等である遺言書が保管されているかを調べる手続きなので、制限する必要はないという事と考えられます。


②相続発生後に については、条文上は明記されていません。

このまま読むと相続発生前でも請求できそうですが、法務省HPで確認したところ、相続発生後と説明されていますので、「遺言書情報証明書」と同様に相続発生後しか請求できないという事になります。


③全国の遺言書保管所(全国約300の法務局)は条文通りです。

遺言書現物が保管されている法務局の他、全国の法務局で請求できる点は「遺言書情報証明書」と同じです。




「遺言書保管事実証明書」申請の添付書類は?


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そして、気になるのは、この「遺言書保管事実証明書」請求時の添付書類です。


これは今後発表される法務省令で明らかにされます。


「遺言書保管事実証明書」は、自身が関係相続人等である遺言書が保管されているか? 調べる手続きであり、請求されて遺言書保管官には「遺言書情報証明書」請求時のような関係相続人等への通知義務はありません。

従って、「遺言書情報証明書」よりかなり簡素な添付資料で請求可能となると考えられます。


具体的には

① 被相続人の戸籍謄本(死亡がわかるもの)

② 請求者の本人確認資料(運転免許証等の写しと原本提示)

基本的にはこれで足りるのではないかと思います。

但し、請求者=関係相続人等を特定するには、氏名、生年月日、住所の一致が必要でしょうから、氏名や住所が変更となっている場合は変更内容を証明できる添付書類(戸籍附表等)が必要になると考えられます。




「遺言書保管事実証明書」発行時に他の相続人への通知はあるのか?

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先に書いてしまいましたが、「遺言書保管事実証明書」請求時に、遺言書保管官から関係相続人等への通知義務はありません。


相続発生後に関係相続人等が遺言書保管所で行う手続きは、次の通りとなります。


①「遺言書保管事実証明書の請求」 ★全国の法務局(遺言書保管所) ★誰でも ★通知義務なし

②「遺言書情報証明書の請求」 ★全国の法務局(遺言書保管所) ★関係相続人等 ★通知義務有り

③「遺言書の閲覧請求」  ★原本保管の法務局(遺言書保管所) ★関係相続人等 ★通知義務有り




おわりに

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今回の第10条は「遺言書保管事実証明書」の請求についてでした。

「遺言書保管事実証明書」は、遺言書保管所に関係遺言書が保管されている事が判らない場合に利用される手続きです。

相続発生後、自分が関係相続人である遺言書が遺言書保管所に保管されているか? をこの手続きで確認する事になります。

この手続きで遺言書保管が判明した場合は、次の「遺言書情報証明書」請求の手続きに移る事になります。


なお、「遺言書保管法」施行後は、遺言書有無の探索には

① 自宅等での「自筆証書遺言書」「遺言公正証書」有無の確認

② 法務局での「自筆証書遺言書」有無の確認

③ 公証人役場での「遺言公正証書」有無の確認

が必要になります。





今回は以上です。


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今回も最後まで読んで頂きありがとうございました😊。

北河内 学

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