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今回は、2018年民法(相続法)改正と同時に公布された「遺言書保管法」(2020年7月10日施行予定)の条文を確認するシリーズの続きです。


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自筆証書遺言の普及を目的に制定された「遺言書保管法」ですが、いったい条文にはどのような事が定められているのでしょうか。


第八条 遺言書の保管の申請の撤回


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今回は第8条(遺言書の保管の申請の撤回)です。早速条文を確認します。


(遺言書の保管の申請の撤回)

第八条 

遺言者は、特定遺言書保管所の遺言書保管官に対し、いつでも、第四条第一項の申請を撤回することができる。

2 前項の撤回をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した撤回書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。

3 遺言者が第一項の撤回をするときは、特定遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、第五条の規定を準用する。

4 遺言書保管官は、遺言者が第一項の撤回をしたときは、遅滞なく、当該遺言者に第六条第一項の規定により保管している遺言書を返還するとともに、前条第二項の規定により管理している当該遺言書に係る情報を消去しなければならない。



前記が条文内容です。

この第八条は、保管申請した遺言書の撤回について定めています。公正証書遺言との実務上の違いと、民法上の撤回とは異なり、返却された遺言は有効のまま(のはず)という点が留意点です。



保管されている遺言書は撤回で返却


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第八条によれば、遺言者はいつでも遺言書の保管申請を撤回する事が可能とされています。

撤回可能なのは遺言者のみで本人出頭が必要であり、代理人申請も認められないのは保管申請時と同じです。

法務省令で定められる「撤回書」に必要書類を添付して撤回申請すれば、保管の撤回となります。

遺言書保管所は、本人からの撤回申請を受け、遺言書原本を返却するとともに、画像データ等の遺言書情報を消去します。

これで保管撤回が完了する事になります。

現在条文上で判断できるのはここまでとなりますが、2点確認しておきたいと思います。




公正証書遺言との実務上の違い

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まず一つ目は、公正証書遺言との実務的な違いです。(その他の遺言方式は便宜上省略)

そもそも公正証書遺言と自筆証書遺言は作成過程から大きく相違するものです。

ただ今回の「遺言書保管法」の下で保管される自筆証書遺言書は、遺言書保管所(法務局)で保管されます。

そのため、この遺言書原本の返却について、今後、混同される可能性があるので確認します。



公正証書遺言として作成される「遺言公正証書」は、作成時に原本(公証役場保管)の他、正本・謄本(本人等保管)が作成されます。

公正証書遺言は一度作成すると返却を受ける事はできません。撤回の場合は、民法上の遺言の撤回として、別途、公正証書または自筆証書遺言を作成し撤回する事になります。

公正証書遺言場合、撤回には別途遺言作成が必要な点、また法的には撤回できても元の遺言書書面は公証役場に残り続ける点がデメリットと考えられます。

これに対し、「遺言書保管法」における自筆証書遺言は、保管撤回により原本の返却を受ける事ができ、遺言書情報のデータも消去されるため、先の公正証書遺言のデメリットを補うものとなります。




民法上の「遺言の撤回」とは違う点に注意!


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先程から、「保管の撤回」と記載しているのは、この「遺言書保管法」上の撤回と、民法上の「遺言の撤回」を混同しないよう留意する必要があると考えるからです。

この「保管の撤回」がどういう実務になるのかまだわかりませんが条文上から判断できるのは、あくまで「保管を撤回」し自筆証書遺言書原本の返却を受ける手続きとなると見られます

という事は、この手続きはあくまで有効な自筆証書遺言の保管場所が変わるだけで、民法上の「遺言の撤回」にはなっていないはずです。

保管の撤回を申請して返却を受けた自筆証書遺言を、「民法上の撤回」をしたと勘違いしてそのまま保有してしまう事にならないか懸念されるところです。

ひょっとすると、返却の際に、撤回とみなされる表示等がなされる運用となるのかもしれませんが・・・

いずれにしても、保管撤回し返却を受けた自筆証書遺言の取扱いには十分注意する必要がありそうです。





今回は以上です。

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今回も最後まで読んで頂きありがとうございました😊。

北河内 学

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