このブログでは、管理者の北河内学が「相続・事業承継アドバイザーFP」として、相続・事業承継についての本音の意見を投稿しています。


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こんにちは。私はアラフィフ銀行員の『北河内学』(ペンネーム)です。

今回は、「貸金庫に保管している遺言書」についてです。


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1 「遺言書」は「銀行貸金庫」に入れてはいけない!

「遺言書」の保管場所に悩む人は少なくないと思います。

「公正証書遺言」であれば、公証人役場で保管される原本以外に、本人の手元には、発行された正本と謄本が各1通ずつあるはずです。

「自筆証書遺言」であれば、自分で書いた原本があるでしょう。


そして、これら「遺言書」をどこで保管するか・・・常に内容を確認できるようにしたいし、でも他人や家族にも見られたくないし、・・・

そこで選択されやすいのが、銀行の「貸金庫」です。盗難、紛失等の心配は小さいし、最近は休日でも全自動で開けられるし、代理人も立てられるし、料金もそんなに高くないので選ばれやすいわけです。

相続の専門家も「貸金庫」を推奨する方がよくいます。

銀行関係者としては、ありがたい次第なのですが、私は自身の銀行現場実務での経験から、特に「自筆証書遺言」は絶対に銀行の「貸金庫」に保管してはいけないと思います。

多くの「銀行実務家」の方には、ご賛同頂けると思いますが・・・。


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2 相続発生後、「貸金庫」内の「遺言書」が取出せない!?見出し2

相続発生後、「銀行預金が凍結されて引き出せない!」という話は、世間に浸透していると思います。

そのため、認知症になった高齢者の預金を、実態を隠して、あの手この手で引き出そうとする親族の方が後を絶ちません。

本当に本人のために利用するのなら良いのですが、たいてい全額や高額の出金希望で対応に右往左往したものでした。



実は「貸金庫」も同様の事が起こるのですが、これは意外に浸透していないのか、相続発生後の「凍結」に困る相続人の方がおられます。


特に困るのが、保管されている「遺言書」が簡単に取り出せない事です。


それでも、遺言書の種類が「公正証書遺言」であれば、まだ良いです。相続発生後であれば、各相続人が単独で公証役場で謄本を請求でき、それで相続手続きができます。


しかし、「自筆証書遺言」の場合は、そうもいきません。早く貸金庫から取り出して家庭裁判所に検認に出さなければいけないにもかかわらず、

凍結された「貸金庫」は、相続人共有状態と考えられ、金融機関は原則として、法定相続人全員での開扉・解約請求がないと応じてくれません。


預金であれば、残高が少なければ、特例的に一部の相続人で解約を受付する金融機関も増えていますが、「貸金庫の場合は、まず無理です。


法定相続人全員での貸金庫の解約請求がスムーズにできれば、相続手続きを進められますが、相続人の中に非協力的な人海外在住者行方不明者認知症の方、などがいる場合、手続きが頓挫することになってしまいます。


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3 それでもなんとか取出すには?

それでも貸金庫の中の「遺言書の有無」を確認する事は全く不可能ではありません。

これには2つ方法があって、ひとつは、「事実実験公正証書」という方法で、これは公証人が立ち会って貸金庫の中身を確認し、格納物の目録を作成するというものです。

もうひとつは、銀行員自身に立ち会ってもらい、貸金庫の中身の確認のみをさせてもらうというものです。


前者は、事前に公証役場での手続きと銀行との折衝が必要ですが、正当に手続きが進めば銀行は拒み難いところがあります。

しかし、後者は「中身の確認だけ」とは言え、銀行側のリスク負担が大きく、応諾は得られにくいでしょう。

そして、一番の問題は、いずれも「貸金庫の中身の確認」しかできない事です。(取り出しは交渉の余地はありますが、まず無理と考えておいた方がよいです。)

従って、たとえ貸金庫の中に自筆証書遺言書が発見されても、取出して家庭裁判所へ検認申請する事もできませんし、封がしてあれば、内容も把握できません。


従って、なんとか相続人全員の必要書類を揃えて銀行に貸金庫開扉請求をする必要があり、郵送での委任状対応や、成年後見人等の法定代理人選任手続き対応等大きな負担が生じます。


なお、「貸金庫取引」において、家族等を代理人に選任しておき、代理人による開扉を可能にしておく事は一般的に行われていますが、相続発生後は代理人による開扉はできない事に留意が必要です。

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4 「遺言書保管法」の施行後は法務局へ保管依頼!

これまでの記述から、「自筆証書遺言」を、銀行貸金庫に保管した場合、紛失や改ざんのリスク面からの安全性は高いのですが、先述のような手続的なリスクが大きくなってしまいます。

よって、自身の相続発生後、相続人全員で貸金庫開扉手続きが可能な状態であれば、銀行貸金庫に保管しても良いのですが、

そうでない場合は、銀行貸金庫での自筆証書遺言書の保管は避けたいところです。

「ならば、どこで保管すれば良いのか」と思われるかもしれません。

確かに難しいところですが、


その答えが今般の「民法(相続法)改正」と「遺言書保管法」の施行にあります。

遺言書保管法」は、簡単に説明しますと、自筆証書遺言を法務局で保管、データ管理し、相続発生後は相続人の請求で発行され、家庭裁判所の検認が不要な「遺言書情報証明書」によって相続手続きができるというものです。

但し、施行は2020年7月10日です。また書式は今後法務省令で一定の様式が定められる見込みです。

これはインフラ整備も含めた大掛かりな制度のため、施行日が近づくにつれて話題性が高まると思います。


法施行後は、この「遺言書保管法」制度を利用した「自筆証書遺言」が安全性、手続容易性で最も優れた方法となり、以後のスタンダードになると思います。

将来の相続に向け、事前に遺言書を作成する場合は、自筆証書遺言を作成しており、「遺言書保管法」施行後に書き換えて法務局へ保管依頼をするのが良い選択だと思います。




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以上です。





最後までお読み頂きありがとうございました。

北河内 学


<資格学習ブログ(抜粋)>